レガートの捉え方

レガートすなわち音をなめらかに繋いで演奏する際、指で繋ごうとしたり、肘の動きで繋ごうとする方は多いと思います。

しかし、それらはいずれも下から上に向かって音を作り出そうとしている打鍵・耳の使い方であり、前に別の記事でお伝えしたピアノはテコの原理という点から考えると理にかなっていないやり方なのです。これでは、音楽のスケールも小さくまとまってしまい、ホールでも響きません。

 

レガートの本質とは、打鍵後の響きを空中で繋げる、というイメージをもつことから始まります。

日本は湿気のある空気や住宅環境の影響もあり倍音が全く響かないため、すぐ減衰する音を繋げようと指や肘でレガートをするという発想になってしまいがちです。ですが、空中で響くペダルに含まれた柔らかな倍音を、耳でレガートにする意識が、音楽を更に立体的に奥行きをもって捉えることができるコツなのです。

それには、柔軟な手首・ペダル・そして耳の使い方が求められることは言うまでもありません。

手の中に響きをもつ

ロシア奏法(重力奏法)では、腕の重さをピアノに乗せて演奏することを目指しています。

その際、身体のほとんどはリラックスした状態、いわゆる”脱力”が求められますが、唯一脱力を決してしてはいけない部分があるとしたら、それはどこだと思いますか。

答えは、手の平なんです。

 

もしも、手の平まで完全に脱力をしてしまったら、手首から先と腕が分断されてしまうため、腕の重さを指先まで伝えることができません。

ここで必要になってくるのが、手の平の筋肉による支えなのです。腕の重さを利用するためには、重さをピアノに伝える際に、手の平を音色に合わせて適度に緊張させるということが非常に重要です。

 

この筋肉を意識するために、私の教室では生徒が小さいうちからトレーニングを開始しています。

 

ロシア奏法においては、多からず少なからず常に手の中は緊張させています。

弾く前、弾いた後どちらも緊張を維持することによって初めて、手の中に音を持つという感覚を実感することができるのです。

基本の手のポジション

演奏する際におけるもっとも自然な状態の手の構えとは、

  • 鍵盤に対して指が斜めに置かれている
  • 小指が鍵盤についている時は親指が鍵盤から少し浮いている
  • 肘が外に出ず、身体の横に自然に位置している

が基本的な条件となります。

これはショパンが考案したポジションである、”ミファ#ソ#ラ#シ”と同じ配置です。この構えにより、手が本来もつ最も自然な状態を保つことができ、手の平と手首の柔軟性を得ることが可能となるのです。

 

逆に、肘を出す奏法では手首の可動域が限られてしまうため、打鍵も真下方向にしかできなくなってしまいます。さらには、打鍵後に真上に上げる動作が必要となり、必然的に指の運動量が多くなってしまうのです。

この指の運動とはいわゆる指の独立のことで、腱の結合が大きく影響しています。もともと腱どうしの結合が強い人は限界があるため、いくら練習しても残念ながら上達しません。

 

構えを変えるだけで、打鍵は真下にならず、柔軟性を備えた手首と共に、腕全体が鍵盤の上を自由自在に動くことが実現するのです。

 

大教育者であり大ピアニストでもあるネイガウスも

「ショパンの生み出したこの配置は試金石だ」

と感嘆しています。